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2015/12/11

川崎市老人福祉施設事業協会様主催 介護研修レポート

11月13日、神奈川県の川崎市老人福祉施設事業協会様のお招きにあずかり、看護師、介護士の方々を対象に、3時間の看取り時の死後ケア研修をさせていただきました。
近年、介護施設の現場での大きな変化の一つに、「看取り介護」が始まったことが挙げられます。
看取り介護は、超高齢化社会へ向けての政府の政策です。ご家族や利用者様にとっては、「人生を終える場所」が病院と自宅の他、介護施設を選択することができるようになったのです。
そのような経緯から、福祉分野からのご依頼を受けて「死後ケア 研修」をさせていただきました。

私事で恐縮ですが、母は特養老人ホーム勤務をさせていただいた時代がありまして、研修のご依頼をいただいてから、寮母時代の母の職業を懐かしく想い出し、(母の)書棚から32年前の「老人ホーム職員優良論文集」(1)を手に取りました。

論文集は、全社協、老人福祉施設協議会設立50周年を記念し、昭和58年に刊行されたもので、当時の老施協(老人ホーム)の施設長、事務職、指導員、寮母、看護婦、利用者の方々の優秀作品が集録されていました。読ませていただき、当時の施設や福祉行政政策に対するご苦労の様子を垣間見せていただきました。作品には、現状の行政に対する問題点や後世への課題、21世紀の福祉に期待する数々の言葉が残されていました。

また、論文集の中に、興味深く拝見させていただいた資料がございましたのでご紹介させていただきたいと思います。
「高齢化のスピード」(2)というもので、世界各国の65歳以上人口の割合を表化した資料です。

以下の解説がございましたので、そのまま引用させていただきます。


わが国の高齢化率が7%を超えたのは1970年。17年後の87年には10%、2000年には14%程度になる。このテンポは先進国に比べ非常に速い。フランスでは7%から10%になるまでに80年、ピーク(2000年)までには120年近くかかる。日本のスピードはフランスの4倍、スエェーデンの3倍以上(厚生省調べ)。

この資料から、わが国の高齢者人口の加速のスピードは、国民と政府にとって、体験したことのない時代を迎える事態となったということ。世界各国に例を見ない加速のスピードだということ。

政府は、医療機関や在宅の他、介護施設を死亡の場所と認め、「看取り介護」が始まりました。
?この事態について、現場の職員様方の業務への不安はないのだろうか。
?施設として体制は整えられているのだろうか。指導はされているのだろうか。
?医師の死亡確認の体制は。
?職員様の夜間の勤務体制は。
?職員様ご自身の精神的ストレスへの対応や指導は。
などなど、あれこれ思いをめぐらせながら研修の準備をさせていただきました。

当日の研修では、「死後ケア業務への不安をできるだけ取り除けるように」「医学的見地に立ってシンプルに情報をお伝えする」、その2点に重点を置き、介護施設での私の死後ケア体験を含めレクチャーさせていただきました。

尊いお仕事をなさっておられる職員の皆様方、お忙しい業務の中ご清聴ありがとうございました。看取り介護の一環としての「死後ケア」は、現場ではまだ始まったばかりで戸惑いがあることしょう。
けれど、いつの日か、経験から改善を重ね、後世に残していける適切な業務技術として定着することを願っております。―入所者様とご遺族のために。

「-老人福祉施設協議会」設立から80数余年。
当時の職員様方は、すっかり現役を終えられ、ご自身がご高齢になられておられることと思います。福祉サービスを利用する立場になられた今、現在をどのように感じられておられるでしょうか?
願わくは、「当時の苦労があったから、今がある。幸せな有難い時代になったなあ」と言っていただけると嬉しいのですが…

文 橋本佐栄子

参考・引用文献
(1)「老人ホーム職員優良論文集」社会福祉法人全国社会福祉協議会、老人福祉施設協議会 1983年3月刊行
(2)    〃  図表12 高齢化のスピード p.45


セミナー風景1 セミナー風景2 セミナー風景3

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