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2019/07/26

2020「遺体感染管理士認定資格養成講座」開講にあたり ~継続看護としてのエンゼルケアの必要性

継続看護としてのエンゼルケアの必要性

有限会社エル・プランナー 代表
遺体感染管理士認定資格 設立講師
橋 本 佐 栄 子

エンゼルケアは、単に化粧と着替えをメインに行うのではなく、搬送中や帰宅後に、医療器具を取り外した部位や鼻腔・口腔から出血・体液の流出が起こらない処置でなければなりません。
ご遺体の身体には、時間の経過とともに特有の変化が現れるため、エンゼルケアには、見た目だけの判断による一過性の処置ではなく、医療者の手を離れた後も継続して対応する処置技術の実施が必要です。
死後の出血等に対応する処置が、継続する看護ケアとしての本来あるべきエンゼルケアだと考えています。

エンゼルケアを行う時、今、鼻腔・口腔から出血していないから、詰めものはいらないのでしょうか?
今、医療器具を取り外した部位の出血が止まったから、どんな処置方法でも良いのでしょうか?
そのようなエンゼルケアで、ご遺体の尊厳は守れるのでしょうか?
自分の家族に置き換えて、どうぞ御遺族の心情を察してください。
ご遺体からの出血を目の当たりにした御遺族の心情を考えたことがありますか?

エンゼルケアには、2つの役割があります。
第1の役割は、搬送業者、御遺族等を感染から守る
第2の役割は、ご遺体の尊厳と遺族ケアです。

ご遺体から流出した血液・体液・排泄物等は、感染リスクが高いことは言うまでもありません。
けれど現在の多くの医療現場でのエンゼルケアは、死後変化に対応する処置が実践されておらず、搬送中や帰宅後の流出被害はなくなりません。流出被害がなくならないのは、継続して対応する処置が実施されていないのが原因です。

まず、医療者が優先しなければならないのは、化粧よりも、病院を出られた後の出血等を予防する身体の処置です。エル・プランナーは、継続する看護ケアの視点に立ち適切な処置を実施することが、ご遺体の尊厳を守る医療者の真のエンゼルケアだと考えています。
化粧は、御遺族がされても、葬祭業者さんにお願いしても、医療者でも、どなたがされても、故人様に対し心を込めてして差し上げれば良いと思います。

ご逝去された患者さんの生前の出血傾向や浮腫等の病態や医療器具が装着されていたことを熟知しているのは国家資格者である看護師です。
多くの看護師さんからたずねられるので、誤解がないようにお答えしておきましょう。
葬祭業は、ご遺体に携わりますが、医療者ではないので、病態、医療器具抜去痕、創傷等ご遺体自身の因子を理解して対応することはありません。葬祭業者さんに、医療者と同様に患者さんの状態を理解して処置ができるだろうと期待するのは理不尽なことです。
メイクや湯灌といったサービスが綺麗にしてくれる、とお考えになる医療者もいらっしゃるでしょう。けれど、その葬祭業サービスは有料のため、購入された御遺族だけがそのサービスを受けられるので、購入されない御遺族は、自分たちで血液を拭き続けるか、心ある葬儀者さんに頼って(鼻腔・口腔の構造もわからないままではあるが)脱脂綿を詰めて頂くかしかないのです。
葬祭業に任せる場合は、適切な技術があるかどうか、最期まで継続してできるかどうかを実際に確かめて判断することが必要です。葬儀屋さんがやってくれるだろうという安易な考えは、ご遺体の尊厳を損ない、御遺族に経済的負担をかけることを理解しておいてください。

遺体感染管理士の皆様、院内・施設・訪問看護等の現場で、死後処置専門看護師、死後処置専門介護士として患者さんとご家族のために、並々ならぬ日頃のご尽力に心から感謝申し上げます。
本来、ご家族から死後処置代として頂いているはずの料金が、目に見えるメイクだけをする化粧料金になってしまっているような病院の昨今、血液等が漏れ出ない処置にウエイトを置く真のエンゼルケアは、シャドーワークになっていると言っていいかもしれません。
処置は貨幣価値に換算されにくい業務ですが、どうぞこれからも患者さんと御遺族のために血液等が漏れ出ないエンゼルケアを続けてください。

間もなく2020年の遺体感染管理士認定資格養成講座の募集が始まります。
エル・プランナーは、実務経験とエビデンスに基づいたエンゼルケア技術を追求し、一人でも多くの医療者、介護士の方々に専門技術をわかりやすく伝えられるように歩き続けています。
ご遺体の尊厳と御遺族のために、継続する看護ケアの考え方に立ち、院内の死後処置専門看護師として遺体感染管理士が誕生することを願っています。

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