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2013/07/13

和歌山ビッグ愛「エンゼルケア・エンゼルメイク講習会セミナーリポート

7月13日和歌山市の和歌山ビッグ愛で、実習のある「エンゼルケア・エンゼルメイク講習会」を開催しました。和歌山県、大阪府、大分県からご参加くださいました。

弊社の「エンゼルケア・エンゼルメイク講習会」の特徴は、死後処置業務時の標準予防策の実施はもちろんですが、帰宅後に、血液・体液が漏れ出ない死後処置専門の手技と、死後変化を前提にしたご遺体専門の化粧法を学習していただく講習会です。
死後処置専門の手技は、患者様(生体)の処置とは異なります。何故なら、ご遺体には死体現象(法医学用語)が発現するからです。

鼻腔・口腔の詰めものの処置について、するかしないかというご質問がありました。
病院では、血液・体液が漏れ出ていなくても、実際に搬送中や帰宅後にそれらが流出しているのが現状です。
受講者様には、帰宅後の、出血事例(詰めものがなかった事例:緩和ケア病棟から帰宅)や体液漏れ等の事例を視聴いただきました。
詰めものをするかしないかというご質問の答えは、搬送中や帰宅後に、感染リスクの高い血液・体液が、「流出することがある」という事実を、処置する人がどうとらえるかによって異なります。
稀にしか出てこないから、しなくても良いと考えれば、詰めないとなるでしょう。
稀にしか出なくても、出る事実がある以上、感染を予防する観点から詰める必要がある、と考えると、詰めることになります。
詰めものの目的を、慣習として捉えるか、あるいは、医学的見地に立って感染予防対策として考るか、ということではないでしょうか。より良いエンゼルケアを目指す医療者の方々の正しい判断を願いたいものです。

出血すると、感染の危険性があるという点だけではなく、ご遺体とご遺族の心情にも関わります。ご遺体の着衣は汚染され、強烈な悪臭に見舞われます。ご遺体の尊厳は損なわれます。それを目の当たりにされるご遺族の衝撃・悲しみはいいかばかりでしょうか。

また、冷却すれば出てこないと教えられたとのご意見もありました。
通常、葬祭業で行うドライアイス処置による冷却や遺体保存用冷蔵庫による冷却程度では、食道・気道は完全に凍結するわけではありません。皮膚表面上が凍結しているからと言って、内部まで完全に凍結しているかどうかを確認することはできません。搬送中など、冷却する前にすでに出ていることもあるので、その点も考慮しなければなりません。
そのような理由から、冷却すると出てこないという情報は、鵜呑みにされない方がよろしいかとお答えしました。

出血・体液の流出被害は、適切な死後処置の手技を実施することで防げます。ご遺族は、愛する人がご逝去されただけで十分心が痛んでおられるのに、そのうえさらに出血被害にあわれるなんて、何というお悲しみでしょうか。

その他、病院から帰宅後、何か不都合があったときは、葬祭業従事者が死後処置をしてくれると思っていた、といったご意見がありました。
葬祭業は、葬儀式を執り行うのが本業です。ご遺体の、搬送業務・冷却(ドライアイス処置)業務・ご納棺など、業務上ご遺体に携わります。しかし、死後処置については、多くの葬祭業従事者は、病院でしていただいていると思っておられます。葬祭業には、一般的に、死後処置という業務は存在しないのです。
私が、ご遺体のケアの仕事をさせていただいて20年が経ちましたが、死後処置は、今も変わらず、医療と葬祭業のどちらの分野からも取り残された処置だと感じています。

医療も葬祭業も、ご遺体とご遺族の死別の悲嘆に対し、心のこもった関心を持ち、適切な死後処置が実施されることを願っています。

講習終了後、化粧や着替えだけではなく、体から血液・体液等が漏れださない死後ケアも重要だということが勉強になったという感想をいただきました。 弊社主催の「エンゼルケア・エンゼルメイク」講習を受講された皆様が、病院へより良い情報として持ち帰り、ご遺体の尊厳とご遺族のために、一人でも多くの医療者の方々へつなげていただくことを願っています。

文:橋本佐栄子

■講習風景

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