【搬送】
ご遺体の搬送とは、ご遺体を寝台自動車、霊柩自動車で運ぶことをいいます。その際、ご遺体は連続的に振動を受けます。1人のご遺体が火葬を終えるまでの搬送の回数は、一般的に2回~3回、多いケースでは4回、まれに5回の場合もあります。搬送の距離は、近隣から他府県に及ぶ長距離まで様々です。
搬送の揺れは、ご遺体の体にどんな影響を及ぼすのでしょうか。自宅へ到着し布団に寝かせた途端、「鼻血が出た!口から何か出てきた!」と、ご家族の予期せぬ事態が起こることがあります。一晩中ティッシュペーパーで拭いておられるご家族に幾度も会いました。布団に安置した直後には流れ出ていなくても、翌日になって着衣がそれらで汚れているのに気づき、あわてて葬儀社に電話をされることがあります。
いったん止まったかのように思われた出血等は、再度の搬送で、葬儀式場へ到着したと同時に再び起こることがあります。ご家族の目に触れる前に、葬祭業従事者がティッシュペーパーで拭き取ります。葬祭業従事者や搬送業者の多くは、プラスチックグローブ、ラテックスグローブを使用する習慣がなく常備していません。
【ご遺体1人の搬送回数と動線】
※医務院
東京都監察医務院を示す。東京都23区対象。死因を究明するための行政施設。解剖が行われる。
【移動】
ここでいう移動は、室内の階上、階下への移動など、人の手によるご遺体の移動をお話しします。病院のベッドからストレッチャーへ移動する際は平行移動ですが、問題は自宅へ到着してからです。
玄関を入り二階、三階へ安置する場合があります。クランクの階段や廊下を通ることがあります。ご遺体を安置するまでには、体を傾斜しなければならない家それぞれの間取りの事情があります。マンションや団地など集合住宅の場合、ストレッチャー搬入スペースのないエレベーターでは、ご遺体を立てるように傾斜して移動します。
移動に伴う身体の傾斜は、ご遺体に負荷がかかります。死後の処置が行われていない場合や適切でない場合は、血液、体液が鼻腔、口腔、医療器具抜去部等から流出する可能性があります。体内ガスが多く放出され、強い異臭を発します。