全身の皮膚が熱傷のように剥離し、血液・体液が連続して浸出している病態の処置法について解説します。
【処置のポイント】
患者のご逝去後は、現在、血液・体液が浸出していない部位からも、皮膚剥離が起こり連続して高リスク体液が浸出する点に留意する。
したがって、標準予防策に基づき、(全身の)どの部位から高リスク体液が浸出しても、人の手が触れない処置を実施する。
【処置の実際】
・浸出部を平オムツ等で巻く。
・等身大の吸収シートで体を包む。
・等身大の吸収シートを体の下に敷く。
・納体袋(死体袋、ボディパウチともいう)に入れる。
現在は、剥離していない皮膚であっても、今後皮膚が剥離するかどうかは、見た目では判断できない。そのため、搬送中や帰宅後、葬祭業従事やご遺族に対する感染予防対策上、納体袋の使用が望ましい。納体袋は、コロナ禍において初めて使用したという看護師の方も多いと思うが、ICUや救命救急といった科部署においては常備することが望ましい。
【葬儀社への申し送り】
搬送に来られた葬儀社へは、次のように申し送りする。「全身から血液・体液が出ているため、納体袋にお入れしています。お体はそのまま、パウチから出さずに棺に納めてください。」
納体袋の使用については、ご遺族へも同様の説明をする。
※納体袋の使用について:一類感染症、二類感染症等を除き、顔の部分は開封し対面可
【ご遺族への言葉かけ】
看護師が先に納体袋の上から体をさすり、患者が病気と闘ったことを褒め、心からねぎらいの言葉をかける。
患者へ、「よく頑張られました、ご苦労様でした」と言葉をかける。
ご遺族へ、「どうぞ、この上からさすってあげてください」と言葉をかける。ご遺族と一緒に納体袋の上から体をさする。
※納体袋の上から身体をさする行為は、コロナ陰性に限り可
ご遺族にとって、この納体袋の上からの接触が、患者へ触れる最後の機会である。
ICUに入って以来、身体に触ることもできなかったご遺族にとって、身体をさする行為は、たとえ納体袋の上からであっても、医療者ができる最良の慰めとなることを知っておかれたい。
橋本佐栄子