平成29年度第3回「遺体感染管理士認定資格養成講座」を中野サンプラザにて開催いたしました。
佐賀県、京都府、群馬県、神奈川県、静岡県、福島県、埼玉県、東京都から看護師、介護士の方がご参加くださいました。
午前中は、2冊のテキストを用いて理論講習を行い、午後からは、医療マネキン、メイクマネキンを使って、遺体用圧迫固定法、鼻腔・口腔の処置、化粧の実習をして頂きました。
遺体用圧迫固定法は、弊社エル・プランナーがご遺体専門の処置技術として実施している処置で、医療器具抜去痕や手術痕等に使用しています。
以前は、エル・プランナーでも、注射針痕等医療器具抜去痕や手術痕の処置に防水フィルムを使用していましたが、防水フィルムでは、血液が流出した事例があったため現在は使用していません。
遺体用圧迫固定法は、防水フィルムのように血液が漏れ流れ出てくることがありません。
ご火葬まで最長2週間、日数が開くケースまで1万件以上の死後ケア業務において検証を重ね、血液が漏れ出ないことを実証して確立したご遺体専用の処置技術です。
遺体用圧迫固定法は、生体の圧迫固定とは大きく異なります。
受講者の皆様は、初めてご遺体専門の処置技術を知り、創部の圧の加え方や粘着テープの貼付の仕方など、患者様の圧迫固定とは異なるため大変驚かれたご様子でした。
「病院では出ていなくても、搬送中や帰られた後、出血しているなんて知りませんでした」
「病院を出られた後のご遺体は、搬送や二階へ上がることがあって、揺られたり傾けられたり身体にかかる負荷がかかるんですね」
「CVカテーテル痕からの出血が止まらなくて、処置の方法がわからなくて苦労したことがありました」
「ご遺体は、生体とは違うんですね。だから死後ケア専門の処置技術が必要なんですね」
等のご意見を頂きました。
普段は見ることができない口腔内、鼻腔内の構造を、医療マネキンを用いて解説しました。
「今、病院では詰めものをしないことになっています。この講習では、詰めることを習いましたが、詰めないで良いという情報と詰めるという情報の全く反対の処置情報に対して、どうしたらよいのでしょうか?」と、ご質問がありました。
情報と言うものは、これで良いと決めつけるのではなく、新しい知見があれば、いつでも検討し、取り入れることが必要です。
詰めておられなかったら、出血が起こることが判明したなど、不都合があれば改善することが必要です。詰めておられたら、その詰め方が適切かどうかを検討する必要があります。
まずは、情報を取り入れることから始め、検討し、正しい情報であれば取り入れ、改善することが必要です。医療は、新しい知見の情報収集・検討・改善を行って進歩してきました。
死後ケアにおいても、改善を行わなければ、出血の被害は拡大するばかりです。
ご遺族、搬送業者、葬祭業等一般人が被害を受けます。
海外の例を見ると、院内感染を克服したイギリスのノースミドルセックス病院では、血液・体液が漏れ出なように処置をして、病室から、ご遺体をパウチに納めて搬送します。血中ウィルス感染症が判明している場合は、「感染の危険あり」のステッカーを貼付します。※わが国では、すべてのご遺体をパウチに納めて搬送することはないと思いますが、ご遺体からの感染を予防する目的で死後ケアが実施されている点や手技について参考になります。
医療・介護従事者の皆様の国家資格者としての死後ケアが変わらなければ、わが国のご遺体からの感染を予防することはできません。ご遺族に寄り添い、麗しいお姿へのケアとともに、感染予防の見地から適切な死後ケアが実施されることを願っています。
ご参加者の皆様、遠方よりご参加頂き有難うございました。
感染予防対策上の死後ケアにご興味をお寄せ頂き誠に有難うございました。
※参考文献:『遺体に携わる人たちのための 感染予防対策および遺体の管理』
医事出版社,2011,改訂第1刷,p.37イギリスでの感染予防対策
文 橋本佐栄子
実習風景